日記(2/7)
考え事をしたいときには, 湯船にお湯を張って半身浴しながら物事を考えます.
しかし, すぐに湯船にお湯を張ることができるわけではなく, まずは湯船の掃除から始めます. カビキラーを噴射して十五分ほど置いてから, 一度シャワーで流して雑巾で側面を拭きます.
そうやって身体を動かしていると, だんだん疲れてきて, あとはお湯を張るだけ, という状況まできても, 既に湯船に浸かるだけの体力は残っていないことがほとんどです.
結局, 今日もシャワーを浴びて浴室を出たあとには, ただ清潔で空っぽの浴槽が残るだけでした. 思えば, 人生そんなことばかりです.
ゴミ出しのついでに郵便ポストを確認すると, 実家から分厚い封筒が届いていました. 中身は, 地元企業のパンフレットやインターンのお知らせでした.
先日, 別の用事で実家と連絡を取った際に, 県内の企業から大量の封筒が届いていると聞いた私は, 何を思ったか, それらをこちらに転送するよう頼みました. それがつい三日前のことです.
どうやらこれらは, 各企業が独立に送りつけてきたものではなく, 県の定住推進課(課の名前は変えてあります)の主導によるものでした.
いちばん上に「A県出身学生の皆様」と書かれた紙には, まず次のようなことが書かれていました.
「県では, 県外の大学に進学された学生の方に, 県内へのUターン就職に目を向けていただきたいと考えております」
本当にその通りだと思います.
実家からの封筒に同封されていた資料の企業は, ほとんどが地元のcmや広告で耳にしたことのあるものでした.
およそ20社ほどの企業の中から, いくつかを抜き取って中身を読んでみました.
どれも社会にとって必要な業務を担う企業でしたが, 私が今, 大学で学んでいる内容が直接関わるような企業はありませんでした.
これは, 理学部で自然科学を学んでいる以上, ある程度仕方のないことだということは理解しています.
これは常々感じていることですが, 他大学へ進学して大卒で就職する同期の友人を見ていても, 今私がいる環境は, かなりゆったりとした時間の流れの中にあるようです.
私自身, 先日の日記にも書いた通り, この春休みは明後日市役所にマイナンバーを受け取りに行くことと, 加えて他学科への大学院進学のためにいくつかの研究室を訪問すること, これ以外の予定が今のところ何もありません.
後は毎日のように物理学の教科書を睨みつけて, 時たま狂ったように叫ぶ……ただこれだけです.
Twitterでは, 定期的に(特定の)学問が何の役に立つのかとか, 自然科学を学ぶ意義とか, そういったものが俎上に乗ります.
私も大学入学以来の三年間で, 幾度となくこの手の議論がなされるのを見てきましたし, 自然科学の入門系の講義で, 教員が自ら話題を取り上げ, その教員なりの答えを聞くことも少なくありませんでした.
私は, 理学部に在籍している身ということもあり, どちらかと言えば学問が何の役に立つのかということには, あまり興味がありません.
しかし, それとは別に, 大学などの公機関でなされる研究という側面では, 多額の税金が投入されている以上, 少なくとも国民を納得させる理由付けは必要だと思っています.
その意味では, 学問が役に立つかどうかは関係なくて, 「私たち人類はどこから来たのか, その起源を明らかにしたいんです」と言って, 人々が納得するのなら, それでいいのだと思います. しかし, 現状はそうなっていません.
私は小学生くらいの頃, 毎週のように父に連れられて隣町の科学館に遊びに行っていました. そこでは, 週替わりで様々な科学実験ショーが行われていて, 白衣を着た職員が様々な実験を見せてくれました.
当時, どのような実験を観たのか, 今となってはほとんど覚えていません. それでも, 私の中に今まで続く科学への好奇心, その種を撒いたのは, 間違いなくあの実験ショーでした.
結局のところ, 多くの人々にとって, 学問は謎に包まれた存在なのかもしれません.
そうした活動を維持するために必要なのが, 科学教育やアウトリーチ活動なのかもしれないな, などとぼんやりと考えていました.
思ったよりも真面目な内容の日記になってしまいましたが, たまにはこういう日があってもいいでしょう.