誠実な生活

実家の隣に葬儀屋がある

日記(2/16)

春休みも四分の一を過ぎた頃ですが, 未だに後期のゼミのレポートを書いています. ゼミは, 同じ宇宙物理学を志す友人ができた, とても貴重な体験でした. 

 

一回生の頃は, 同じ授業を履修していた友人とはTwitter上でも繋がっていたのですが, ゼミのメンバーとは, 結局最後までゼミ以外での繋がりを持つことはありませんでした. 

 

そもそも学科の人数が少ないので, Twitterのbioに所属学科を書いておけば, 自然と同じ所属の学生からフォローが来て繋がってゆきます. もしかしたら, お互いに認知していないだけで, ゼミのメンバーとも既にTwitterで繋がっているのかもしれません. 

 

それでもなお, 私たちはお互いのSNS上での姿をさらけ出すことはしませんでした. 

 

ゼミの内容は, 太陽観測でした. 半期を通して学んだことは数多くありますが, ひとつ最も重要だと感じたことを挙げるなら, 現代の天文学者もまた, 太陽を直視することによる視力の低下という, ガリレオの時代から変わらない問題を抱え続けている, ということです. 

 

よく言われることに, 現代の天文学者は空を見ない, というものがあります. すなわち, 現代において天文学者が向き合うのは, 天文台における観測により得られる膨大なデータであって, もはや自らが空を見上げて観測を行うことはない, ということです. 

 

しかし, 私たちはこの半期の間, 常に空を見上げ続けました. 時には太陽光を直に目に入れてしまい悶絶したこともありました. 

 

それは太陽観測が, 太陽がなくては実施できないという, 一見当たり前のように思われるけれど, この上なく重要な性質を持っていたからです. 

 

太陽が雲に隠れてしまえば, その時点で観測は不可能になります. だからこそ, 私たちは空を見上げます. 雲はどこからやってきて, そしてどこへゆくのか……

 

その意味で, ますます高性能になってゆく光学系を以てしても, 私たちは今なお, 空を見上げるという最も原始的な行為を続けているのです. 

日記(2/15)

前日夜の21時から始まったサークルの定例会は, 実に翌日の早朝6時前まで続き, その最後まで出席した私は, まだかろうじて部屋の暗いうちに眠りに就こうと布団の中に入りました. 

 

週に一度の頻度で開催される定例会は, 何か目的があるわけではありませんが, しいて言えば会員の親睦を深めること, そして, 孤独な私たちが完全に社会から隔絶することを回避することが目的でした. 

 

実際, 今年度のミール制度が終了してからというもの, 私はこの定例会を除いて, 他人との交流をほとんど持ちませんでした. だからこそ, 私はこの定例会だけは他のいかなる用事を差し置いても優先しなければならなかったのです. 

 

定例会では, 前回の定例会以降の近況報告から始まり, やがて雑談に移ります. 雑談の内容は, 極めて多様です. アニメや漫画の話, 進路の話, 直近の社会ニュースなど……

 

今期は, 『スローループ』というアニメを視聴しています. いわゆるきららアニメであり, 女の子たちが中心となって話が展開してゆくという点では, きららアニメの王道を踏襲した, 極めて古典的な作品と言えるでしょう. 

 

周囲の評価を見ると, 設定が重いという点できららアニメらしくないという評価が目立ちました. なるほど, そうかもしれませんが, 私はあまり気になりませんでした. 

 

この作品には, 女の子が涙を流す場面が出てきます. 私はいつの頃からか, 少なくとも物心ついた頃には, (とりわけ未成年の女の子が)涙を流すという行為に対して, 非常に敏感でした. 

 

私がこうした, ある意味で奇妙なものに執着するようになった所以は, およそ10年の時を遡らなければなりません. これについては, 気が向いたら書くことにしましょう. 

 

少なくとも, 女の子が涙を流すということに, 何か特殊な価値を見出していることは確かです. 

日記(2/14)

先日, ネットショッピングで注文した本が届きました. およそ15,000円分のうち, 半分が女性同士の恋愛ものの漫画や小説でした. 

 

いわゆる百合と呼ばれる系統の作品を, 中高生の頃はほとんど読んだことがなかった気がします. 当時はもっと, 男女間の恋愛を描いた古典的なものであったり, もしくは恋愛要素のほとんどないコメディものであったりを好んで読んでいました. 

 

読書とは, 一種の自傷行為に近いのかもしれません. 大学生が主人公の恋愛漫画を読むたびに, 過去にほんの一ヶ月だけ交際して, 絶望的な形で破局した元交際相手のことを思い出して胃の中のものを吐き出したくなります. これまでにニ, 三度ほど, 実際にトイレで吐き出しました. 

 

そんなことがあっても, 自傷行為が止まることはありません. いったい, なぜでしょうか?

 

お昼過ぎに, 友人が私の部屋を訪ねてきました. 友人もまた, 私とは異なる形で交際相手と悲劇的な破局を果たした人間でした. 

 

「最近, pixivの更新がないけれど, 今は何も書いていないのかい」

 

開口一番, 友人は尋ねました. 

 

「pixivの作品タグというものがあるのを知っているね?」

 

「もちろん」

 

「私は作者以外でも作品タグを追加できるように設定しているのだけれど, 以前投稿したssにタグが追加されたんだ. それは, 私の意図しないカップリングタグだったよ」

 

「それが不愉快だったということかい」

 

「いや, 不愉快さは特になくて, むしろ意外だと思ったよ. 私の書いた作品に, 私の意図しない解釈を与えられたわけだからね」

 

「それと作品の投稿が止まっていることに, なんの関係が?」

 

「問題は, そのカップリングタグが, よりにもよってメジャーカップリングのタグだったということだよ」

 

私がメジャーカップリングをほとんど書いてこなかったこと, まして, 特定のマイナーカップリングに固執していると捉えられても言い逃れできない数のマイナーカップリング作品を投稿してきたことは, 先日友人に指摘された通りでした. 

 

「メジャーカップリングだと何か問題でもあるのか」

 

「私はかつて, 信念なき逆張りは身を滅ぼすと言ったね?」

 

「ふむ. しかし, 君の逆張りには信念があるのではなかったか」

 

「そう. 私は信念を持って逆張りを決め込んでいた……そう, そのはずだったんだ. しかし, 今回の件を鑑みるに, 私の作品には, 私の意図しない形でメジャーカップリング要素が組み込まれていることになる. これがどういうことか分かるね?」

 

「……」

 

「私の逆張りに, 信念などなかったことになる. それはゆめゆめ許されないことだよ」

 

私の声は, 自分でも分かるほどにひどく震えていました. 

 

「……中学一年の頃, 男子はこぞってカッターシャツを出して, 制服のズボンを下げていたのを覚えているかい」

 

「ああ, 私も大勢に倣ったよ. 今にして思えば, 格好の悪いものだった」

 

「私はあのとき, むしろシャツをしっかり入れて, ズボンも行き過ぎというくらい上げて過ごしたものだよ. 思えば, あれが私の逆張り人生の始まりだった」

 

あれから, もうすぐ10年になります. 

 

「私の逆張り人生は, いったい何になったというのだろうね?」

 

私の問いかけに, 友人は真っすぐに私を見つめたまま, 唇を噛みしめていました. 

日記(2/13)

大学入学以来, 朝食というものを取った記憶がほとんどありません. 一回生の頃は, 大学の購買でおにぎりと野菜ジュースを買って, 一限が始まる前に食べることは珍しくありませんでした. 

 

しかし, 回生が上がりキャンパスが変わると, 一限よりも早い時間に回転している購買が近くにないこともあり, 長らく朝食を取らない生活が続いていました. 

 

小学生の頃は, 保健室だよりなどに「朝ごはんを食べる生徒は学力が高い」という内容の特集が乗ることは珍しくありませんでした. 当時の私も, 確かに朝食を取った方が頭がはたらくから, これは正しいだろうと考えていました. 

 

今ではこの言説は, 朝食を取ることと, 学力が高いことの間には相関関係こそあれ, 因果関係は必ずしも認められないというのが一般的な認識でしょう. 

 

思えば, 私の通っていた小学校では, こうした怪しい言説がほとんど無秩序に流布していました. 

 

「ありがとう」という言葉を掛け続けた水はきれいになり, 逆に罵声を浴びせ続けた水は濁ってくる……小学校低学年の道徳の授業でこの話題が扱われたとき, 当時の私はやはり疑問に思うことはありませんでした. 

 

そんな私が, 今では大学で物理学を学んでいるのだから, 人生分からないものです. 

 

そんなことを考えていたため, 今朝はなか卯の朝食メニューを食べに行きました. 白米とみそ汁に, 目玉焼きとベーコン, 味付け海苔が付いて, 380円でした. 

 

一日の食費を千円に抑えている身としては, 少しばかり痛い金額です. 

 

結局のところ, 丁寧な暮らしをするには金がかかるという, 極めて当たり前の事実を受け入れることから, 私の一日は始まったのでした. 

日記(2/12)

大学生協のミール制度が終了してから, 一週間が経ちました. 

 

この一週間は, なか卯のチキンカレーをほとんど毎日食べています. なか卯は毎回, 何らかの次回以降利用できるクーポンがもらえるので, 食費を節約している身としては非常に助かる存在です. 

 

この手の生活をしていると, 毎日同じものばかり食べて飽きがこないのかとよく聞かれます. これはミール制度というものを全く理解していない質問だと言えるでしょう. 

 

大学の食堂のメニューは, 基本的に週替わりで提供される品が変わります. そうなると, 月曜から土曜まで, 六日間連続で同じメニューを頼むということは, なんら珍しいことではありません. 

 

その意味で, 私は同じ食事が何日も続くということに関しては, かなり寛容であると言えます. 

 

とはいえ, 毎日同じ食事が続くことは, 味に飽きがなくとも, ひどく単調で退屈であることは確かです. 

 

そうした事情もあり, つい先日, 下宿から少し歩いた場所にある唐揚げ専門店に食べに行きました. 

 

店の前には自転車がなく, 私は仕方なく徒歩で店まで行きました. 

 

京都に来てから強く実感したことですが, とにかくこの土地には駐輪場がなく, あっても有料であることがほとんどです. 私が生まれ育った土地では, 有料の駐輪場を見たことがありませんでした. 

 

自転車乗りに人権のない私の地元が, 駐輪場という観点においては自転車に優しい土地であるというのは, 考えてみると全く奇妙なことです. 

日記(2/11)

開店直後の牛丼屋でカレーをかき込んだ後, 散髪に行きました. 1200円の, 素朴な散髪屋です. 最初に「スポーツ刈りで」と言えば, あとは黙っていればよいので気が楽です. 

 

散髪の最中, どこに視線を置いておけばよいのか, 未だに分かりません. 鏡に映る自分の姿を, 髪を切り揃えられてゆく途中の姿を見るのは, どうにも居心地が悪いものです. 

 

ふと, 人生で初めて散髪屋に行ったときのことを思い出しました. 幼少期の私はひどく人見知りで, 散髪は基本的に母の仕事でした. 初めて散髪屋に行ったのは, 中学一年のとき, 同じく散髪屋に行ったことのない友人に誘われてのことでした. 

 

中学から歩いて五分もかからない場所に, その散髪屋はありました. 店内は薄暗く, 待機場所の側には, ドラゴンボールゴルゴ13の漫画が置かれていたことをよく覚えています. 

 

散髪はつつがなく終わり, その呆気なさに私は拍子抜けしました. しかし, 私は結局高校卒業まで, 散髪屋に行くことはありませんでした. 

 

あのとき一緒に散髪に行った友人とは高校進学を機に疎遠になり, 昨年の成人式に参加した際, 友人と同じ高校に進学した別の友人から, 彼は高校を中退して以降消息を絶ったと聞きました. 

 

私の生まれ育った町で, そうしたことはさして珍しくありませんでした. 

 

散髪を終えて, 午後から友人が来るので, 近くのパン屋でクロワッサン(プレーン)とクロワッサン(チョコ)を100gずつ買いました. 

 

正午をまたいだ頃に友人が訪ねてきて, 少し議論を交わしたのちに, 友人が書店に行きたいと言うので, すぐ近くのショッピングモールにふたりで行きました. 

 

そのショッピングモールはエスカレータで二階に上ってすぐのところに, 未就学児程度の子どもが遊べる小規模な空間がありました. 今日は祝日ということもあり, 何組かの親子連れが来ていました. 

 

目当ての書店でしばらく物色してから, 私たちは何も買わずに書店を出ました. 

 

再び, 子どもたちの空間の側を通りがかったとき, 友人はすぐ近くのベンチに座ろうと言い出しました. 疲れたのだろうかと思い, 私は同意しました. 

 

そのベンチからは, 子どもたちが遊ぶ様子がよく見えました. 

 

「かわいらしいね」

 

「そうかい」

 

彼は遠い目をしていました. 

 

親子連れの一組か二組が入れ替わってから, 彼は口を開きました. 

 

「……正月に帰省して, 親戚の集まりに顔を出したんだ」

 

「ほう」

 

「そのとき, 一昨年に結婚したいとこが子どもを連れてきていてね. ちょうどあれくらいの年齢だったよ」

 

彼はある親子を指さしました. 

 

「めでたいことじゃないか」

 

「君はそう思うか」

 

このとき, 彼がその性的不能性のために恋人と破局してから, 既に一年が経っていました. 

 

「帰ろうか」

 

不意に, 彼は立ち上がりました. 私の方など省みずにどんどんと歩いてゆく彼を, 私は慌てて追いかけました. 

 

私たちは, 家に帰ってきました. 机の上にはまだ, 彼のために買ったクロワッサンが残っていました. 

 

「せっかくの祝日だというのに, 私たちはあそこで何をしていたのだろうね」

 

「……」

 

「客観的に見て, あの場の私たちは周りからどう見られていたのかしら. まさか不審者ではあるまいね」

 

「……」

 

彼の病状について, 私はほとんど表面的なことしか知りません. "それ"は一生涯治らないものなのか, それともまだ治療の余地があるものなのか……

 

「……君はこういうときばかり饒舌になるね」

 

彼は私に背を向けて, ふてくされたように横になってしまいました. 

日記(2/10)

はてなブログtex記法が使えると知ったので, すこし数式を書いてみたいと思います. 


汎関数  I[u] ;


 \begin{align}
I[u] = \int_{a}^{b} \left[ p(x) \left( \frac{du}{dx} \right)^2 - q(x) u^2 \right]dx
\end{align}


を, 束縛条件


 \begin{align}
\int_{a}^{b} u^2 w(x) dx = 1
\end{align}


および  x=a, b における境界条件


 w(x) = 0 \, \, \, \mathrm{or} \, \, \,  p(x) u'(x) = 0 \, \, \, \, \, \, \mathrm{at} \, \, \, \, \, \, x = a, b


の下で停留させる変分問題は,  x=a, b における境界条件


 w(x) = 0 \, \, \, \mathrm{or} \, \, \,  p(x) u'(x) = 0 \, \, \, \, \, \, \mathrm{at} \, \, \, \, \, \, x = a, b


の下でのSL型の微分方程式


 \begin{align}
\frac{d}{dx}\left( p(x) \frac{du}{dx}  \right) + q(x) u + \lambda w(x) u = 0
\end{align}


固有値問題と等価である. また, このとき


 I[ u ] = \lambda


である. 今, 固有関数  u_{0}(x) が解であるときに, 束縛条件, および境界条件を満たす試行関数を


 u = u_{0} + \delta u


とする.   I[ u] を計算すると, 




\begin{align}
I[ u] =& \int_{a}^{b} \left[ p(x) \left( \frac{du}{dx} \right)^2 - q(x) u^2 \right]dx \\
=& \int_{a}^{b} \left[ p(x) \left( \frac{du_{0}}{dx} + \frac{d \delta u}{dx} \right)^2 - q(x) (u_{0} + \delta u)^2 \right]dx \\
=& I[ u_{0} ] + 2 \int_{a}^{b} \left[ p(x) \frac{du_{0}}{dx}  \frac{d \delta u}{dx}  - q(x) u_{0} \delta u \right]dx + O\left( (\delta u)^2 \right) \\
=& I[ u_{0} ] - 2 \int_{a}^{b} \left[ \left\{ \frac{d}{dx}\left( p(x) \frac{du_{0}}{dx} \right)   + q(x) u_{0}\right\} \delta u \right]dx + O\left( (\delta u)^2 \right) \\
=& I[ u_{0} ] + 2 \lambda \int_{a}^{b}  w(x) u_{0} \delta u \,dx + O\left( (\delta u)^2 \right) \\
\end{align}


ここで,  u = u_{0} + \delta u は束縛条件を満たすので,



\begin{align}
1 = \int_{a}^{b} u^2 w(x) dx =& \int_{a}^{b} (u_{0} + \delta u)^2 w(x) dx  \\
=& \int_{a}^{b} u_{0}^2 w(x) dx + 2\int_{a}^{b} u_{0} \delta u  w(x) dx +  O\left( (\delta u)^2 \right) \\
=& 1+ 2\int_{a}^{b} u_{0} \delta u  w(x) dx +  O\left( (\delta u)^2 \right) 
\end{align}


よって,



\begin{align}
\int_{a}^{b} u_{0} \delta u  w(x) dx \sim  O\left( (\delta u)^2 \right) 
\end{align}


なので,  I[ u_{0} ] = \lambda より,



\begin{align}
I[ u ] = \lambda +  O\left( (\delta u)^2 \right) 
\end{align}


を得る. (参考: 小野寺嘉孝『物理のための応用数学裳華房


「SL型の微分方程式について, 固有関数が精度 \varepsilonのときに, 固有値の精度は \varepsilon^2になる. すなわち, 固有値が精度よく出たからといって, 短絡的に固有関数にも同じだけの精度があると思い込むのは, 非常に危険なことだね」


こんなことを, とある講義で教員が口にしていたことを, ふと思い出しました.


日に日に, 暖房の設定温度が下がってきました. ひと月前には, 日中でも23℃にしておかないと耐えられなかったのが, やがて1℃ずつ下がってゆき, 日中には暖房を付けなくても過ごせるようになりました. 今, 暖房の設定温度は19℃まで下がっています. じきに, 夜間でも暖房は不要になるでしょう. 


今日は風呂に湯を張って, 久々に肩まで浸かりました. お湯に浸かっているとき, 私はほとんど建設的なことは考えません.


日記というにはずいぶんと数式の多いものになってしまいました. 議論に誤りがある場合は, 私が心の中で謝ります.