日記(2/20)
春休み開始より読み進めてきた田崎統計力学1ですが, 最後の章である, 電磁場と黒体輻射の章に入ったので, 先駆けて第二巻を注文しました.
学科で宇宙物理を学んでいることもあり, 黒体輻射という単語は数えきれないほど目にしてきました. 黒体とは, 全ての振動数の電磁波を吸収する仮想的な物体のことです.
田崎には, 次のような記述があります.
『すべての電磁波を完全に吸収するから, 「黒い」のである』
この一文に, 私は在りし日の記憶を呼び起こしました.
小学生の時分, 太陽の照り付ける暑い校庭での体育の時間……教師の言葉がよみがえりました.
「髪の毛は黒いから, 光を吸収して熱くなる. だから, 体育帽をちゃんと被るように」
なるほど, 体育帽を被らずに炎天下で過ごした後, 頭に触れると驚くほどに熱くなります. 対照的に, 白い体操服に触れても, 特に熱さは感じません. すなわち, 黒いものは光を吸収するのだなと, まだ物理学のぶの字も知らない当時の私は納得しました.
しかし, 実際は因果関係が逆だったのです. 黒いから光を吸収するのではなく, 光を吸収するのだから黒く見えるのだ. と……
こんな単純なことに気が付くのに, 私は十年以上の月日を費やしてしまったのか……
私はそれ以上ページを読み進めることができず, しかし奇妙な感動と幸福を覚えつつ, 本を閉じたのでした.