誠実な生活

実家の隣に葬儀屋がある

日記(2/2)

今日もゼミの延長戦のため, 朝から大学に行きました. 

 

ゼミは午後まで行われることが分かっていたので, 私は購買でミールを利用しておにぎりをふたつと野菜ジュースを一本買いました. ゼミの友人らは各々コンビニやスーパーで昼食を調達していました. 

 

昼食を取りながら, 私たちは昨日に引き続いて大学院入試について話し合いました. 思えば, 私たちは三回生の学科分けのさいも, そして四回生のゼミ選択のさいも, 特に誰かと争うということをせずに第一志望への進学を果たしてきました. 

 

そのつけが, 大学院入試で清算されるのではないか……誰かがぼそりと呟いたとき, 私たちはその発言者を特定する気にはなれませんでした. 

 

そして, 二日間におよぶ延長戦を終えると, その時点で私たちのゼミは解散することになります. そのうち三人が四回生で同じゼミを選択し, 二人が別のゼミを選択しました. 

 

私は後者でした. 

 

このゼミでの繋がりは消えるけれど, 個々人ではあまりにか弱い存在である私たちは, 連帯しなくてはならない. そう言うと, 皆は複雑な感情を覚えつつも同意するほかありませんでした. 

 

夕方の十六時に差し掛かる頃合いに, 私たちは大学構内で別れました. 誰も, これが今生の別れになるとは思いません. 

 

それでも私は, この半年間にわたって苦しみを分かち合ってきた友人らと, 熱い抱擁を交わしたくてしようがありませんでした. 

 

同じ学科で学ぶ者同士, また会えないなんてことはなかろうな. 去り際に私がそう言ったとき, 友人のうちのひとりが, 私に背を向けたまま, 親指を立てて見せました. 

 

私はその友人の姿が見えなくなるまで, その場で直立不動の形を崩しませんでした. 

 

ありがとう……

 

思わず飛び出した言葉を, 私は何度も頭の中で反芻させながら帰路に就きました. 

 

下宿に帰ると, 私はすぐに寝間着に着替えて, 布団に潜り込みました. 冷たくて, 私はしばらくの間, 縮こまって震えていました. 

 

すっかり日が沈んでから, 私はもそもそと布団から抜け出して, 昨日の続き, 統計力学の教科書を読み進めて, また小説を読みました. 

 

これから二か月間の春休み, 既に決まっている予定を書きだしてみました. ちょうど一週間後に, マイナンバーの受け取りを最寄りの役所で予約していることを除いて, 何ひとつ予定は埋まっていませんでした. 

 

そうか, もうゼミは終わったのだったか……

 

私はその事実を再度確認して, 今日はもう眠ることにしました. 

 

明日になれば, 事態は何かしら……少なくとも今日よりは好転しているだろうから.